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私の旅はいつも朝から始まる。
昨夜の酒がけだるい朝を演出してくれる。
もう少し寝床に潜り込みたい気持ちを引きずりながら、荷物を淡々とまとめていく。

夜行列車を利用して移動する旅人は多い。
宿賃も節約できるし、眠っている間に移動ができるというダブルメリットがある。
しかし私は、その街に泊まる。
泊まって街の美味いものをたらふく喰い、美酒を呷って至福の時をその街で過ごす。
その街に抱かれて、その街を感じて眠りにつく。

だから私は、余程のことがない限り、その街を去るのは朝と決めている。
なぜなら朝こそが出発に相応しいと勝手に信じているからだ。

目覚めた頃はまだ真っ暗だった戸外から、やがて朝の陽光が差し込み始める。
柔らかな陽の光を浴びながら、昨夜の思い出を胸に仕舞い込んだ私は、さっと踵を返して次の街を目指す。
varna.jpg
[ブルガリア バルナ港の夜明け 黒海を渡ってトルコを目指す]
2008.10.30 Thu l 未分類 l COM(0) TB(0) l top ▲
「旅にヤラれる」と言う表現を聞いたことがあるだろうか。
どういう事かと言うと、文字通り旅にヤラれてしまう病気らしい。
それでは一体何を言っているのかさっぱりわからないので若干解説を加える。

自分で全てを手配して組み立てていく旅は、とてつもなく楽しいが実は結構シンドい(と思う)。
その国を自力で周ろうとすれば、日本とは異なる文化や風土に、時には魅せられ時には辟易しながらも、体中にその国の洗礼を浸透させて行くことになる。
しかし、やがて旅を終えた旅人は日本へと戻り、清潔な服に着替え、ヒゲを剃り、日本の社会構造の中に取り込まれ、旅の記憶を忘れていく。

ところが、日常のふっとした瞬間にその記憶が鮮やかに呼び覚まされる瞬間があるというのだ。
駅で通過する列車が巻き起こした風の向こうに、なだらかな丘陵を埋め尽くした一面の向日葵が、突然浮かぶ。
紅茶の香りに、みすぼらしい欠けた茶碗で飲んだ茶と横に添えられた濁った氷砂糖が、突然思い出される。
そうなるともうダメで、旅の記憶が次々と連鎖反応のように懐かしく思い出されて、しばらくは何も手がつかなくなるという。
これが旅にヤラレるということらしい。

私自身どうかというと、これは良性の反応と受け止めているが、時折ではなく、日常のあらゆる瞬間に今まで旅した国の情景が突然浮かび上がって来る。
つまりは、毎日どこかの国にヤラレちゃっているのである。
そしてその病がどうにも昂じてしまった時、それが次の知らない国への旅のきっかけとなる。
私の仕事部屋には世界地図を始め、東南アジア、ヨーロッパなどの地図がべたべたと張られている。
(それ自体がヤラレる原因となることも多いのだが...)
ふとした折にスタッフが私の部屋を覗くと、壁の地図を眺めながら視線遠く、魂の抜けたような表情をしている私に気付く。
おもむろに彼女は他のスタッフにこう言うのだ。

「またヤラレてる...」
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[チェコ共和国 首都プラハの街並 左手にプラハ城、右手にヴルタヴァ川を望む]
2008.10.29 Wed l 未分類 l COM(0) TB(0) l top ▲
子供のときの話。
悪童達と遊び疲れる頃には、山端には真っ赤な夕陽が輝いていた。
日没は一日の終わりを告げる壮大な儀式だ。
幼い私は畏敬を持ってそれを眺めていたに違いない。

その郷愁にも似た幼い頃の憧憬を、自分は旅に重ねているのかも知れない。
異国の街で迎える夕暮れは、どことなく寂しげで、それでいてどことなく華やかで...
深紅の空と豊曉の大地の狭間に包まれた私は、その柔らかな懐でしばし陶然となる...
ほろ酔い心地の旅の回想録は自己陶酔と共に続く。
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[ビエンチャン@ラオス メコン川に夕陽が沈む頃には、川べりの土手にたくさんの屋台が現れる]
2008.10.28 Tue l 未分類 l COM(0) TB(0) l top ▲
どこまで旅をしてみても、その先の空には白い雲がぽっかりと浮かんでいる。
あの雲の向こうにはいったい何があるのだろう?
歩き疲れた足をもう一歩踏み出すと、そこにはまた知らない街が現れる。

だから旅は止められない。
街から街へと歩いていくと、景色が変わる...言葉が変わる...人々の双眸の色さえも...
全て感じ取ろう...馥郁とした茶の香り...子供たちの唄声...山間を吹き抜ける風の匂い...
土地の美酒に酔いながら、夢見心地の旅の回想録は如何なものだろうか。

silkroad1.jpg
[カラコロム・ハイウェイ 中国側から山の向こうのパキスタンを望む]
2008.10.28 Tue l 未分類 l COM(0) TB(0) l top ▲